有機農業のお話
その2
虫のお話
 有機農業といえば、無農薬です(中には生物農薬を使う人もいますが)。そうなると、無農薬でどうやって野菜を育てるのかと疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
 そこで今回は有機農業の醍醐味というか、これぞ有機農業というお話をしたいと思います。 
 これは爽菜農園の野菜を定期宅配している方には以前農園だよりに書いた事があります。またきちんと書物などで調べたものでなく、あくまで有機農業の仲間から聞いたり、今までの経験などからの知識ですので、あまりつっこまないで下さいね。
 キャベツの栽培を例にしますが、爽菜農園では一つの畑に一つの野菜ではなく、色々な種類の野菜を交互に植えて、それぞれの害虫や病気が大量発生しないように工夫します。しかしやはり春と秋には、キャベツやブロッコリーの植えてある畑にはモンシロチョウが、それはもう狂喜乱舞という言い方がピッタリなほど、まるでそこがお花畑かと思われるくらいたくさん舞っています。
 するともちろん蝶が卵を産み、卵から青虫が孵って、だいたい一つのキャベツに5、6匹はあたりまえというくらい、青虫がたくさんキャベツにいて葉を食べています。
 しかし、畑に座ってじっと見ていると、この青虫を運んでいく虫がいます。アシナガバチです。しかも良く見ていると、仲間のアシナガバチが途中で中継してピストン輸送しているのです。そうしてどんどんアシナガバチたちが青虫を運び去っていってくれるのです(これは有機農業仲間に聞いた話です)。
 また、爽菜農園は除草剤を使いませんから畑には草がたくさんはえています。しかも里山の中にありますから周りは自然がとても豊かです。すると畑に行くと、草に隠れてキジの親子がバサバサと逃げていくのをしょっちゅう見かけます。キャベツの間にキジの羽が落ちているのも見ましたし、きっとキジが青虫を食べてくれているのではないかと思います。そしてある日、今年は青虫が多いというので、虫とりをしてみました。すると次の日、食べる青虫がいなかったからでしょうか、なんと今度はキャベツが食べられていた、なんていうこともありました。
 やはり有機農業では、植物や自然の力を信じて、必要以上に手を入れず、生物のバランスが取れた状態を保つのがよいのかなーと思った出来事でした。
畑に落ちていたキジの羽です。キジはすぐに逃げてしまうのでなかなか写真が撮れません。オスはとっても綺麗なのでいつか写真にとってHPに載せたいです。
 そしてこの写真は、アオムシコマユバチという、小さな蜂の繭(マユ)です。この蜂は青虫の身体に卵を産みつけます。その卵が孵ると、青虫の身体の中で幼虫になり育ち、その幼虫が繭になると青虫の身体を突き破って出てくるのです。この写真では写っていませんが、この蛹と一緒に抜け殻になった青虫も良く見かけます。
 それからこれは、有機農家の間では結構有名な話ですが、あまり学術的にきちんと調べられていないので(よーく調べればどこかに載っているかも知れませんが)、名前はよくわからないのですが、何年も農薬を使わない畑では、秋に青虫やハスモンヨトウなどの害虫が大発生しても、それを殺してしまう菌があり、いつのまにか青虫たちがいなくなってしまうのです。これは毎年そういう現象が起きるわけではなく、その年の気候や畑の状態などにもよるらしいですし、その菌に冒された虫を集めて菌を培養して畑に蒔けば青虫を退治できるという問題ではなく、一回でも農薬を使ってしまえば、害虫だけでなく益虫や全ての生命がなくなってしまいますが、農薬に頼らない農業を続けていけば、生命のバランスが取れて、単一の病気や害虫が大発生するようなことがなくなるということです。
 最後はキャベツなどの野菜自体の生命力です。こんなに青虫に食われたからとあきらめずに、今まで土作りしてきた畑の土と苗から丈夫に育てた野菜の力があれば、キャベツは内側から葉をどんどん作り出し、ちゃんと丸まった立派なキャベツになってくれるのです。
 ただし肥料がたくさんあればいいというわけではありません。肥料が多すぎる畑は、野菜が脆弱に育ち、肥満の人や贅沢に育った人が病気になりやすいように、病気や害虫を呼び寄せるのです。土自体がフカフカで有機物や微生物が豊かで生命力があれば肥料はあまりやらなくても強く元気に美味しく育つのです。
 そしてこういう風に、土作りも含め生命のバランスの取れた状態の畑にしていくには、3年から5年くらいは時間がかかります。
こんなに楽しくて(時には苦しくて)身体に良くておいしい有機農業の世界が、作物を育てる農家も有機農業で生計を立てる人が増え、食べる消費者も理解ある人が増え、たくさんの人に広がっていったら嬉しいです。
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